東京地方裁判所 昭和41年(手ワ)4905号 判決 1967年2月22日
原告 北三商事株式会社
右代表者代表取締役 北原玄二
右訴訟代理人弁護士 坂上寿夫
同 尾崎昭夫
被告 総建興業株式会社
右代表者代表取締役 岡芳彦
右訴訟代理人弁護士 佐藤淳
主文
被告は原告に対し金二、二二五、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年二月二日から右完済までの年六分の割合による金員を支払わなければならない。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮に執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は請求の趣旨として主文第一項同旨の判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。
一、被告は別紙手形目録記載の約束手形二通を振出した。
二、原告は右手形の所持人である。
三、右各手形は満期に支払のため呈示された。
四、被告会社の商号は右各手形の振出当時株式会社二宮商会であったが、昭和三九年三月三〇日現商号に変更された。
五、そこで、原告は被告に対し、右各約束手形金合計金二、二二五、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年二月二日から右各手形金完済までの年六分の割合による利息金の支払を求める。被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁として、「請求原因のうち被告会社が原告主張のとおり商号を変更したことは認めるが、原告主張の手形を振出したことは否認する。もっとも、原告が本件において被告振出しの各手形であると主張するものに、被告が各支払期日欄の記載を除き(印刷の不動文字昭和年月日はあったが)その余の各約束手形要件を原告主張のとおり記載し、かつ被告会社名及びその代表者の記名捺印をしてこれを原告に交付したことは認めるが、それは、昭和三七年三月三一日金二、一八〇、〇〇〇円、同年四月一〇日に金四五、〇〇〇円を原告から借受けた際、それらの受取の証として約束手形用紙を利用して原告に預けたもので手形としてその振出しをしたものではない。」と述べ、抗弁として、「仮りに右行為が手形振出しにあたるとしても、本件各手形には以上のとおり満期日の記載がなかったので、同各手形は一覧払手形とみなされる。従って一年以内に支払呈示をなすべきであるが、原告は右期間内にその呈示をなしていない。よって被告は本件手形の支払義務はない。」と述べた。
理由
原告が各被告振出しにかかる約束手形であると本件において主張するものが、約束手形用紙にすべての約束手形要件の記載されたものであること、そのうち、支払期日欄の記載を除く、その余の右要件部分が原告主張のとおり被告によって記載されたものであること、とくに、振出人欄の被告会社(その旧商号をもってするもの)名及びその代表者の記名捺印の部分が被告によってなされたものであることは被告の認めるところである。そうすれば、特別の主張及びその証明がないかぎり、経験則上、右は約束手形として、原告主張のとおり、被告によって振出されたものと推定すべきであるところ、被告は、右をただ借受金受取の証として原告に預けたもので手形として振出したものではないと主張するが、その証明はないので、右推定をするのほかはない。
被告は、本件各手形は満期日を記載せずに振出されたものであるから一覧払手形とみなされると主張するが、前記のとおり被告は本件手形を振出す際、ただ支払期日欄下の昭和年月日の不動文字に数字を記入しなかったのみであり、このような事情のもとでは被告は支払期日の補充権を同各手形所持人に委ね、白地手形として本件各手形を振出したと認めるべきである。したがって、本件各手形が一覧払手形であることを前提とする被告の抗弁は理由がない。
そして本件各手形が右のとおり満期白地として振出されたとしても、その補充が不当であることの主張立証はなく、その余の原告主張請求原因事実については被告は明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。右請求原因事実によれば、原告が被告に対し本件各手形金二、二二五、〇〇〇円とこれに対する支払期日の後である昭和四二年二月二日から右各手形金完済までの年六分の割合による利息金の支払を求める本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して主文のとおり判決する。
(判事 畔上英治)
<以下省略>